
前奏曲とは
前奏曲(プレリュード)には潜在的に「個人的」・「柔軟で自由」・そして「即興的」な特徴を含んだ音楽様式といえますが、その起源を「プレリュード・ノン・ムジュレ」に見ることができます。楽譜に記された最古の前奏曲はルネッサンス期のもので、その後バロック時代に更なる発展を遂げました。
ハーバード音楽辞典によると、前奏曲の主要な特徴に「個性的な名人芸」・「自由なリズム」・「希薄な主題的構築」などが挙げられ、「ティエント」・「トッカータ」・「リチェルカール」・「ファンタシーア」・「アルペッジアータ」・「タスタータ」・「エントラーダ」などは全て様式的、機能的にも事実上「前奏曲」と同じとあります。
最も古い前奏曲の例はオルガン、リュートやその他のルネッサンス期の弦楽器の為に自由な作風で作曲された即興的な小品だと考えれており、主作品に入る前の序奏、又は演奏家の指慣らしの為に演奏されました。
プレリュード・ノン・ムジュレ

17世紀のフランスでは、リュート奏者やチェンバロ奏者達によって拍子記号や小節線、そしてしばしば音価の指定が無い、非定量的な前奏曲、「プレリュード・ノン・ムジュレ」が発展しました。リズムに関する解釈は演奏家に委ねられている為、即興的な要素が大変顕著です。

こちらはルイ・クープランによるプレリュード・ノン・ムジュレの例。独特の表記法が興味深いです。
フランス以外での2つのプレリュード・ノン・ムジュレの例
フランス以外の場所でも非定量的な前奏曲を見ることができます。下の楽譜はドイツの有名な作曲家、シルヴィウス・レオポルト・ヴァイス(1687−1750)による「ソナタ第3番 ト短調」の前奏曲から抜粋したものです。


下の例は我々ギタリストにとっては「ファンタシーア ホ短調」として知られている事が多い、かの有名な「ファンタシーア ハ短調」です。前半部分はプレリュード・ノン・ムジュレで作曲されています。

