今回のギター工房インタビューはスペイン、マドリッドのテオドーロ・ペレスさんです。
Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。
私たちは1966年操業の家族経営の伝統的手工業クラシック/フラメンコ・ギター工房です。
経歴:
1966年にコンセプシオン・ヘロニマ通り2番地にあるホセ・ラミレスの修行工房で働き始めました。リュートやバンドゥリアなどの弦楽器を製作していました。
私がプロとして働く準備が整ったとホセ・ラミレス3世に認められた際には、彼の為に働いていた最も偉大なギター製作の巨匠達の弟子として働く様、「ヘネラル・マラガジョ通り」の工房へと私を送りました。
1969年にいくつかの試験を合格した後、私は「オフィシアル・デ・プリメーラ」に昇格しました。その後、「G.P.M.」又は「nº 13」という署名のもと異なるモデルのギターを製作し始めました。
アンドレス・セゴビア、ナルシソ・イエペスなどクラシック/フラメンコ・ギターの著名なマエストロたちと個人的に会う等、この時期は私に素晴らしい経験をもたらしました。
1991年、ホセ・ラミレス3世と働き始めてから26年後に、私は独立する決心をしました。この時期に私の楽器は世界にお目見えしたのです。
現在、私は「TEODORO PEREZ」という署名のもと、息子達と共に働いています。セルヒオは1998年からギター製作家として、ベアトリスは管理者兼ギター製作家として2005年から働いています。私の婿であるマルコ・アントニオ・テハーダは4年前に我々に加わりました。
私のギター製作家としての47年間に多くの弟子を輩出してきましたが、現在はそれを私の息子達と継続しています。
Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?
楽器に良い音質を与える要素はたくさんあります。
考慮すべき事柄(しかしこれはその一部です):
- 木材の選択と自然乾燥のプロセス。もし木材が正しく乾燥していないとギターは将来木の伸縮による問題を抱えてしまいます。我々の木材の乾燥プロセスの期間は、例えば、カナディアン・レッド・シダーの表面板は10年、ネックは20年です。
- 表面板は最も重要な部分の一つで、それぞれの工房が、異なる厚さ、力木、そしてそれを使った補強方法を用いて独自性を出しています。
- 他の重要な部分はネックです。最高の弾き易さを引き出すために、最適な弦高に調整されます。
- 塗装に於いては、我々はギターの音色を損なう事のが無く、職人技術が必要なフレンチ・ポリッシュを使います。
Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?
我々のギターはとても弾きやすいように設計されています。これを得るためには、顧客の要望に添って、ネックの厚さや弦高に特別な注意を払っています。 加えて、全ての演奏家はそれぞれ異なるタッチを持っているので、演奏家の演奏スタイルも考慮する必要があります。
Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。
我々の仕上げ塗装方法は、合成塗料よりデリケートで軽く、天然材料であるフレンチ・ポリッシュです。これは遠達性に於いても勝っています。私はラッカーは一度も使った事がありません。
フラメンコ・ギターには、通常ニトロセルロースか合成塗料を使います。いわゆる伝統上の理由からです。しかしながら、私はフラメンコ・ギターにもフレンチ・ポリッシュを使った事があります。私は常に顧客の要望に応じて、楽器がどのように仕上がるかを説明しながら、アドバイスをしています。
Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか?
現在, 650mmが標準サイズになっています。しかし、私は528mm(アルト・ギターの場合)から664mmまでのギターを作り続けています。私の製作するギターの全体から見ると非常に少ない割合ですが、ショート・スケール・ギターの需要は更に快適なギターを探し求める日本の市場で日毎に増加しています。
例えば、628mmスケールのロマンティック・ギターでは、ボディの製作方法は異なります。前にも述べた通り、私たちは製作する全てのギター・モデルに於いて演奏のしやすさに関心を払っています。
我が社では標準のギターを提供していますが、もちろん、スケール、木材、仕上げ塗装、弦高など顧客の希望に添ったカスタマイズ・ギターも承ります。
Q6. 多くの読者がギターを色々と試奏していく内にますますどのギターが良いのか分からなくなってしまう様です。製作家の立場から、楽器店や工房でどのようにギターの音質や弾き易さをチェックしたら良いのか、アドバイスを頂けますか?
まず、どんなギターを求めているのかをはっきりさせて下さい。練習用ギターですか?それともそれ以上のものですか?言うまでもなく、もしあなたが学生であるなら、又はあまり予算が無い場合、学習の最初の1年に練習用ギターを購入するのは良い選択です。昨今は値段と品質のバランスの観点から、とても良いギターがあります。それらのギターは部分的、又は全部工場で生産されます。
もしあなたが何年も楽しめるギターを探しているのなら、手工業ギターに投資するのは良い選択です。材料の選択、乾燥、そして組み立ての工程に於いて、私が前述した通り特別な配慮がされているからです。言うまでもなく、それらの配慮がされているギターの価格はそうでない物とは異なります。
手工業ギターとそうでない物を見分けるためには、あなたが経験を積み色々なギターを知る事が必要です。あなたが木材やブリッジのディテール、サドル、ネックの仕上がり等を実際に見たり、選択できる事が重要です(さもなくば工房を信用するしかありません)。
私たちはギターが完全に、そして慎重に手作りされている事を保証する証明書を顧客に提供しています。
最後に、あなたに一番良く合ったギターを見つける事はとても重要なので、ギターを試奏する事を恐れたり、焦ったりしない様忠告します。例え、ギターが同じ製作家によって同じ方法で作られていたとしても、1本たりとも同じ音がするものはありません。 それぞれのギターがそれぞれのニュアンスを持っているのです。
Q7. 顧客に対してアフター・サービスはありますか? 特に、高額なギターの購入について心配している人たちも多いと思われるのですが。
製作に於ける欠陥について、我々のギターは完全な保証がついています。
我々は顧客に対して手工品質とケアについての証明書を提供することに加えて、ギターは「生きている」材料によって作られており、不適切な湿度に長い間さらされると変化を余儀なくされる事を説明しています。我々はギターの製造品質の保証はしますが、楽器の不適切な取り扱いによって生じた損傷は対象外です。
例えば、湿度30%又は90%の状態に長い間ギターがさらされると、ギターが損傷する事があります。我々は湿度50〜60%の間に保たれた状態でギターを製作しています。ギターが正しく取り扱われたかどうかは簡単に見分けることができます。
Q8. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?
明らかに、いくつかの種に於いて, 利己的で行き過ぎた伐採が合ったのだろうと思います。規制が必要で、それは全ての人のためになると思います。前述した通り、それらの材料は「生きて」おり、その意味で自然環境は尊重される権利があると思います。
音質と見た目に関して同じように素晴らしい代替材料は存在します。ギター製作で我々が考慮すべき事は、密度と音の伝播性です。
現在, 素晴らしい音質を備えるギターはマダガスカル、ココボロ、インディアのパロサント等を使っています。しかし、これらの木材ももう既に輸入規制がかかっています。
もし輸出したり購入したりする度に、更なる規制や事務処理が必要になるのであれば、最終的にそれは商品の価格に響くのです。
Q9. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?
全ての人にとってとても困難な時期です。近年、たくさんのギター製作家が現れ、私がマドリッドの偉大なる製作家達から学んだ手工業ギターの品質に対する信用に傷がついてしまいました。
私が信じる高品質の手工業ギターは価値のある物として評価され続けるでしょう。そして、ギターの世界を知るプロはそれを評価し続け、また探し求め続けるでしょう。いずれにしても、私の場合、ギター製作家として、息子達に工房の後を引き継いでもらえると言う褒美を授かったので、リラックスしています。