「ガルシア・ロルカの詩『アディビナンサ・デ・ラ・ギターラ(ギターの謎々)』から受けたインスピレーションをきっかけに、スペインのギターの音質を多方面から探求する」という奏者の意図に基づくミランからスミス=ブリンドルに至る多彩な曲目を、技巧、音楽性ともに一級の実力を感じさせる演奏で見事に表現している。日英西3ヶ国語による詳細な曲目解説も好ましく、一聴をお薦めしたい1枚である。」
現代ギター
「アルバムはやや厳粛な16世紀の作品3曲で幕を開くが、美しいソルの作品の演奏で活気を取り戻す。Suwaは叙情的、そして時々現れる快速で正確な指さばきが必要とされるパッセージの両面で良い仕事をしている。(…)ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグのピアノ作品 孤独なさすらい人(…)はこのディスクの最も素晴らしい小品の一つである。イギリスの作曲家レジナルド・スミス・ブリンドルの黄金のポリフェーモは厳格ではあるがその前のマヌエル・デ・ファリャのドビュッシー讃歌の演奏と効果的に組み合わされている(…)。ここからアルバムのトーンはドラマチックに転じ、スペインの作曲家/ギタリスト、アンヘル・バリオス作品から物惜みしない選曲がディスクの最後まで続く(…)。この凝縮された大きな作品群を聴くことは私にとって正に嬉しい驚きであった(かつてこれらの作品の中のいくつかをばらばらにちらほらと聴いたことしかなかった)。全て魅力的なスペインの叙情性やロマンシチズムに満ち溢れ、(…)真の情熱が宿り、エロイサやグラナダの庭などの作品に見られる感情喚起はとても深みがある。私はなぜ(アンヘル)バリオスの作品がもっと演奏されないのか分からないが、もしかするとこのアルバムがそれを変えるきっかけになるだろう。この比較的世に知られていないレパートリーに深い情熱を傾け、また、このように美しく発表してくれたKazu Suwaには脱帽である。」
ブレアー・ジャクソン、クラシカル・ギター・マガジン (アメリカ合衆国)
「日本人ギタリストによる魅力的なスパニッシュ・トリビュート
昨今のギタリスト達がギターに最も関係の深いスペインに対してある意味距離をおこうとしている中、このアルバムは爽快なまでにスペイン的であることを前面に打ち出した素晴らしく吟味されたコレクションである。(…)バリオスの作品群は真の発見で、これだけでもこの録音にお金を払う十分の価値がある。Kazu Suwa はこれらの小品を新鮮で探究的な視野から上手くまとめることに成功した。このレコーディングは間違いなく研究する価値がある。」
季刊クラシカル・ギター・マガジン – 2018年夏号(アメリカ合衆国)
「私は2016年2月にKazu Suwaの素晴らしい1作目の録音を批評したが、現在『アディビナンサ・デ・ラ・ギターラ』と題する彼の次作を楽しんでいる。(…) しばしば見られる内省的なムードが素晴らしい音で収録され、Suwaの繊細なギター演奏は前回同様、洗練され表現豊かなものである。(…) Suwaの入念で節度のあるアプローチは本来ビウエラのために書かれたルネッサンス期の3曲によるオープニングに大変適したもので、ここで聞かれるギターによる演奏は細部にわたるまで真正なものである。彼はルイス・デ・ミランによる2つの『ファンタシーア』とエンリケ・デ・バルデラバノによる『ソネット』を選択し、フェルナンド・ソルによる性格曲『もしも私がシダだったらによる序奏と変奏曲』のためにぴったりな雰囲気を醸し出している。この作品は4つの変奏を持った性格的小品で見事に抑制の効いた演奏がされている。
Suwaによるエドヴァルド・グリーグの切実なピアノ曲、『孤独なさすらい人』による編曲が間奏曲として用意され、明白にダウンビートで内省的なマヌエル・デ・ファリャによる『ドビュッシー墓碑銘のための賛歌』に導かれる。この作品はファリャの唯一のギター曲で、若干異なって繰り返される2つの音楽的断片によって描かれる様は緊迫した雰囲気を作品に与え、Suwaによってこの上なく効果的に表現されている。
我々が現代ギター音楽の世界に足を踏み入れる頃には、ある意味このアルバムの中心的コンセプトである『ギターのなぞなぞ』に辿り着く。しかし、ロルカが一つ目の巨人であるポリフェーモ(ギリシャ神話のサイクロプス)とギターとの間の類似点を描くように、片足は過去に残しつつ、英国の作曲家、レジナルド・スミス・ブリンドルによってこの上なく巧妙に実現される。その作品は『黄金のポリフェーモ ギターの為の4つの断章』と題され、4つの楽章よりなる。この作品は2003年に死去したブリンドルのギター作品の中でおそらく最も有名なものであろう。彼のイディオムは他の音楽作品と大いに対照的である一方、前衛ギター音楽として相当の評価に値する素晴らしい作品である。Suwaの解釈は大変考え抜かれたもので相当な技巧をみせる傑出した演奏である。
トラック16では、スペイン人作曲家アンヘル・バリオスによる9作品のコレクションと共に、我々は突如アンダルシーアの日差しの中に足を踏み入れる。この上なく興味深いこの作曲家のギター音楽作品を録音収録したコレクションはほどんど無く、それだけでもこのアルバムを購入する価値がある。バリオスは、ロルカやファリャによるフラメンコから派生するイディオムの実現においてインスピレーションの源であり、また、このアルバムに収録されているファリャのギター曲において運指や技術的問題について助言した。 (…) この性格的作品のコレクションは大変よく選曲されたもので、Suwaはフラメンコ・スピリッツにどっぷりと浸かりつつ、自らの技巧により音楽に輝きを与えることを可能にする、ということを完全に自然な形で実現している。
もしかするとアーティストの意図に反するかも知れないが、私は繰り返しこのコレクションに回帰したことを告白する。遥か遠くのグラナダの色鮮やかな音に命を吹き込む彼の演奏は、この音楽をなんとも人の心を惹きつけてやまないものにしている。小さな宝石とも言える『グラナダの花』か2部から成り心を揺さぶる『アルハンブラの小川』を単に聞くだけで私の意味する事が分かるであろう。
録音自体はKazu Suwaの1作目のアルバム同様、高水準のものである。ギターの音は決して無理がなく大変自然でダイナミックな遠近感である。このコレクションは型破りであるが、勉強になるライナー・ノートやバリオスの専門家イスマエル・ラモスによる博学な解説も合わさり、確実に知る価値があるものである。」
レイ・ピコット、イベリア・ラテンアメリカ音楽協会 (イギリス)
ミランやバルデラバノのビウエラ作品に始まりソルの古典作品、グリーグによるロマン派ピアノ小品のギター編曲版、そしてフャリャやブリンドルの前衛的な作品からアンヘル・バリオスによるフラメンコ・スタイルの作品に至るまで、隠れた名曲の数々を一つにまとめたこのアルバムは、ギタリスト諏訪和慶によるフェデリコ・ガルシーア・ロルカの詩「アディビナンサ・デ・ラ・ギターラ(ギターのなぞなぞ)」の私的な解釈を象徴しています。
ルネッサンス期から20世紀に至るまでの音楽作品を通じて、様々な音楽様式やその背景にある哲学のたゆまない変遷をたどりつつ、その暖かくて輝きのある音色と叙情性により人々に愛され続けて止まないスパニッシュ・ギターの醍醐味を探ります。
このアルバムにはグラナダの作曲家アンヘル・バリオスの専門家かつ伝記作家であるイスマエル・ラモス氏による貴重なライナーノートが付属します(日本語・英語・スペイン語)。
- カタログ番号:
- KSR002
- 収録時間:
- 60分45秒
- フォーマット:
- CD, ダウンロード、ストリーミング
- 作曲家:
-
- ルイス・デ・ミラン
- エンリケス・デ・バルデラバノ
- フェルナンド・ソル
- エドヴァルド・グリーグ
- マヌエル・デ・ファリャ
- レジナルド・スミス・ブリンドル
- アンヘル・バリオス
ルイス・デ・ミラン:
- ファンタシーア 第10番
- ファンタシーア 第8番
エンリケス・デ・バルデラバノ:
- ソネット
フェルナンド・ソル:
「もしも私がシダだったら」による序奏 と変奏曲 作品26:
- 序奏:アンダンテ
- 主題
- 第1変奏
- 第2変奏
- 第3変奏: レント・カンタービレ
- 第4変奏:アンダンテ・アレグロ
エドヴァルド・グリーグ:
- 孤独なさすらい人(抒情小曲集・第3集・作品43より 諏訪和慶編)
マヌエル・デ・ファリャ:
- ドビュッシー墓碑銘のための賛歌
レジナルド・スミス・ブリンドル:
黄金のポリフェーモ ギターの為の4つの断章:
- 1番:十分にアダージョ
- 2番:アレグレット
- 3番:ラルゴ
- 4番:リズミカルかつ快活に
アンヘル・バリオス:
- グラナダの花
- クリスティニージャ
- エロイサ
- カディスからハバナへ
- 古いロマンス
- グラナダの庭
- ロサリオ・デ・ラ・アウロラ
- アルハンブラの小川:エボカシオン
- アルハンブラの小川:トナディージャ