クラシック・ギター製作家:カルロス・ルイス・ガジャルド(スペイン)

今回のギター工房インタビューはスペイン、バルセロナのカルロス・ルイス・ガジャルド(ギターラ・ガジャルド)さんです。

Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。

私は15歳の時からスパニッシュ・ギターを弾いています。恐らく、ほとんどのギター製作家達の楽器に対する関心は演奏する事による愛情に端を発しているのだと思います。それからかなりの年月が経ち、文献やインターネットでギター製作に関する情報を集め始めました。カディスへ旅立ち、ラファエル・ロペス・ポラス師匠にギター製作を学んだ後私にとって始めての楽器を製作する事が出来ました。

Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?

ギターとは総体です。共鳴性があり、重さの均整がとれていて、演奏しやすく、また特に反応がよく遠達性に長けたものでなければなりません。それらを得る為には、良い木材や正確な寸法取りだけではなく、やはり長い経験が必要です。

Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?

低い弦高、太すぎないネック、楽器が軽量である事などいくつかの要素があります。しかし、最終的には個人的な好みによって演奏家が弾き易さの定義をするのです。

Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。

伝統的なフレンチ・ポリッシュを施す事は職人にとっての喜びです。長い時間をかけて製作した作品を最高の塗料で仕上げるのです。楽器の振動や将来の修復作業に取って最適な方法です。フレンチ・ポリッシュの短所はそのデリケートさです。そのため多くの製作家達は楽器の最も重要な表面板をシェラック・ニスで塗装し、その他の部分は摩耗から防ぐ為他の種類のニスを施しているのです。

Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか?

個人的に、どのような音響的特性があるのかを知る為に小さいギターを作る事に非常に興味がありました。その為、630mmの弦長のマエストロ・アントニオ・デ・トレス(モデル・SE02)を参考にしました。その音は驚くほど暖かく、音量は予想以上で驚嘆しました。古典音楽に理想的で、もし試奏すれば多くのギターリストがその素晴らしさに驚くであろうと思います。

Q6. 多くの読者がギターを色々と試奏していく内にますますどのギターが良いのか分からなくなってしまう様です。製作家の立場から、楽器店や工房でどのようにギターの音質や弾き易さをチェックしたら良いのか、アドバイスを頂けますか?

まさに沢山のギターを試奏するとくたくたになって、少し正しい判断をする事が難しくなってしまいますね。多数のギターを取り扱うとき私が最初に目を付けるのは重量、快適性、そして演奏のし易さです。 ハーモニクスの音が明瞭なら、フレッティングが良い証拠です。12フレット近くの音の反応性は良い楽器である証です。これらの音は魅了で輝きがないといけません。この辺りの音が貧相な場合はあまり良いギターではないでしょう。次に細かい仕上げの質等、良い仕事をしてあるのかどうか、物理面を考慮します。

Q7. 顧客に対してアフター・サービスはありますか? 特に、高額なギターの購入について心配している人たちも多いと思われるのですが。

ギタリストによって引き起こされた事故ではなく、製造過程による欠陥は常に保証されています。

Q8. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?

これについてはまさに、使用する木材が持続可能な様に管理されたものであることを確認するなど、自然環境を尊重していかなければいけません。もう入手不可能であるブラジルのパロ・サント等は、行き過ぎた伐採によって種の絶滅に追い込むような結果を招きました。

明らかに木の年齢と品質は19世紀の物とは異なりますが、ギターの構造を改良する事によって入手可能な木材の能力を最大限に引き出していかなければいけません。

Q9. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?

ギター製作の世界は過去の何時よりもまして活気にあふれています。ギターは世界的な名声を博し、仕事を愛するギター製作家達や彼らのギターを必要とするギターリストに限りはありません。この伝統が消える事は決して無いでしょう。