今回のギター工房インタビューはスペインはアリカンテのカルロス・フアン・ブスキエルさんです。
Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。
私はヴァイオリンと音楽教育の勉強をしました。実際、私は音楽の教師として9年間勤務しました、全くの独学で、2年間ヴァイオリン製作をしましたが、これを通して楽器製作の素晴らしい世界を発見する事に至りました。この経験の後、カディスでラファエル・ロペス・ポラスによるギター製作講習会に参加しました。その後、私はヴァイオリン製作を離れ、色々な本や他の製作家にアドバイスを求めたり、ホセ・ルイス・ロマニージョスによるビウエラ製作の講習会に参加する等してギターに対する知識を深めながら、ギター製作に専念する事にしました。十分な注文が得られる様になった頃、私は公立学校での教職を退職し、プロとしてギター製作だけに従事する事を決意しました。
Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?
私は伝統的なスペインのギターが大好きです。もちろん、トレスが私のお手本ですが、彼の道を継承したその他の製作家達も同様です。ガルシーアやシンプリシオを代表とするカタルーニャ派の仕事、例えばサントス・エルナンデスやハウザー等、をとても尊敬しています。幸運な事に私はそれらの多くの楽器をこの手で実際に触る事が出来ました。私にとって彼ら有名な製作家のたどった道を継承する事はとても重要な事です。
昔のギター製作家達はとても良いギターを製作していました。彼らの技術や方法に関する知識を得る事無くしてこれを更に発展させる事は出来ないと強く信じています。
これをふまえて、私は大変伝統的な方法に集中しています。私が今まで聞いた、それらの伝統的なクラシックギターの音を獲得するよう挑戦しています。私は何か新しい事を発明するつもりはありません。むしろ、木材ともう長い年月に渡って実証されている方法を最大限に生かしたいと思っています。私はギターに深い低音と声部の分離を求めています。私は音楽家達が制限無く自らを表現出来る興味深い音、そして彼らがそれを聞くことによってさらに関心や驚きを保ち続けられる音、を求めています。
Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?
私の優先事項の中で恐らく最重要なものに、ギタリストにとって快適なギターを製作する、という事があります。私にとってそれは、(奏者の)右手左手両方において、弦がある一定の柔軟性をもつことを意味します。私は表面板があまり硬質過ぎず、軽量なギターを製作する事でそれを獲得しています。素早く発音し、異なる音の強弱を簡単に生み出す事が出来なければいけません。特に、ピアノ(弱音)は制限があってはいけません。私は伝統的なスペインのギターはこれらの目標を達成し易いと考えています。
Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。
疑いの余地無く、高品質な本物のギターは手作業によるフレンチ・ポリッシュで仕上げられるべきだと考えます。フレンチ・ポリッシュは音質面で最も透明な仕上げで、他の方法は思いつきません。折角ギターの細部にわたって注意深く設計した後に、プラスチックの層で塗り固めてしまう(他の方法)は理解出来ません。(それらは)他の人には上手く行くのかもしれませんが私のギターには使いたくありません。
Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか?
私は標準650mmスケールの支持者です。私は演奏性を(スケールを短くするのではなく)前述した様に別の方法から向上させたいと思っています。とは言うものの、私は645や640の短いスケールのギターを製作した事があります。小さい手に演奏者にとってとても意義深いことになり得ます。その場合は、弦のテンションも低くなっているので必要に合わせて異なるテンションの弦で補う必要がある事に留意してください。
Q6. ギターを設計/製作する段階である特定のブランド・種類・テンションの弦を考慮していますか?
私はミディアム・テンションのナイロン弦を使用する事を好みます。特にダダリオのEJ45cです。いずれにしても、私のギターはミディアムとハード・テンションのどちらでも良い結果を生み出すと思います。カーボン弦を使用して良い結果を出しているギタリストもいます。最終的に、これはギタリストが決定する事です。
Q7. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?
私はインディアン・ローズウッドが大好きです。これは素晴らしい楽器を作るのに適していると思います。また、イトスギ、メイプル、そして時たまマダガスカル・ローズウッドも使用しています。たまに顧客から私がブラジリアン・ローズウッドを使ってギター製作出来るのか質問されますが、単に私は在庫を保有していない事を伝えて、代替材料を薦めています。Leonardo Guitar Research Projectのように持続可能な材料を使って最高品質のギターを製作する事が可能である事を証明するとても興味深いプロジェクトがあります。
Q8. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?
実際、唯一不便な事は木材の入手が困難になっている事です。年々難しくなってきています。我々の職業を継続出来るよう、音楽家達が伝統的でない木材を受けれ入れてくれる様に望みます。
この職業の将来については、音楽家達がいる限り、伝統的な手工楽器の需要があり続けると確信しています。加えて、インターネットのお陰で知識が伝わり易くなり、若手のギター製作家達が頭角を現しています。彼らはいろいろ主張する事があるでしょうし、この世界の中に自分の居場所を探していくだろうと確信しています。