
フェデリコ・モンポウの歌と踊りは15組からなる曲集で、1918年から1972年まで55年間にも渡ってピアノの為に単独に作曲された小品集です(例外として第13番はギターの為に、第15番はオルガンの為に作曲された)。それぞれの対は叙情的でゆっくりとした「歌」とそれに続く快活な「踊り」によって成り立っています。これらの殆どはカタルーニャ民謡の旋律を基に作曲されましたが、第3番の踊りと第5・6・11番のそれぞれ歌と踊りはモンポウが民謡風に作曲したオリジナルです。
歌と踊り第10番は1953年にピアノの為に作曲され、その後「ギターの為の歌と踊り(アルフォンソ10世の2つのカンティガによる)」というタイトルのもとモンポウ自らの手によってギターの為に編曲されたもので、カスティージャ王アルフォンソ10世 によって編纂された聖母マリア頌歌集の中の2曲の旋律が基になっています。「歌」には「Santa Maria, Strela do dia [聖母マリア、日中の星] (CSM 100)」 が、「踊り」には「Ben sab' a que pód' e val [粉挽き小屋の跛行女] (CSM 179)」が使われています。
ギターの為の歌と踊りの手稿譜
聖母マリア頌歌集
聖母マリア頌歌集は聖母マリアが起こした奇跡を詠った単旋律の歌を集めた物で定量記譜法とガリシア・ポルトガル語で書かれています。13世紀後半にカスティージャとレオンを治めていたアルフォンソ10世「賢王」の宮廷で作曲されたり、吟遊詩人達の歌を収集する事によって編纂されました。聖母マリア頌歌集は単なる文集や奇跡集であるわけではなく、中世の文学・音楽・芸術の発展にとって非常に重要な意味合いを持つ一大文化的プロジェクトでした。