クラシック・ギター製作家:ロジャー・ウィリアムズ(イギリス)

クラシック・ギター製作家:ロジャー・ウィリアムズ(イギリス)

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今回のギター工房インタビューはイギリス、スタッフォードシャーのロジャー・ウィリアムズさんです。

Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。

面白い事に、私が最初のギターを製作する事を決意したのは金欠病だったからです!私は20代中頃でデイヴィ・グレアムやバート・ヤンシュ等のフィンガー・スタイル奏者の音楽に夢中でした。この時より何年も前、丁度私が12歳頃にスティール弦のギターを与えられ、最終的には「フラマス(訳者注:Framus:1946年から1975年まで操業していたドイツの最大の弦楽器メーカー)」と物々交換したのですが、全然面白くないので私には何か新しいものが必要でした。しかし、妻に二人の子供達、家のローンの為あまりゆとりがありませんでした。こうして私はシドニー・エヴァンズ・ヴァイオリンから材料と本を購入して製作に没頭し始めました。 本はマックリオッドとウェルフォードによる著作でクラシックギター製作の設計と製作方法について記述されていました。しかし、このプロジェクトに関してはあまり長続きしませんでした。製作を初めて間もなくセーリングの手ほどきを受けてしまい、何年間もセーリング熱に冒されてしまったからです。ボートの修理や製造に熱中するのと、仕事と家族で私の全ての時間が奪われました。しかし、まだギターは演奏していました。そして、これがスペインのギターの音に魅せられるきっかけとなりました。
私の親戚は皆何でも作ったり修復してしまう優秀な職人で、私は彼らに囲まれて育ちました。こうして、私は何か技術を発展させる運命だったのです。子供の頃はあらゆる類いの模型を作って過ごしました(主に飛行機。私は常に空を飛ぶ事に魅せられてきました)。私は学校ではかなり頭が良く、ロールスロイス・エアロ・エンジン部で機械工学の見習いのポジションを得ました。これは、当時ではケンブリッジ大学に合格するようなものでした。この機械工学の見習いとその後の設計家や生産技師、企画主任としての仕事を通じて設計・生産・精密技術が必要な仕事に必要なものを全て得る事が出来ました。そして、もちろんまだギターを弾いていました!約12年前に失業し、 これは絶好のチャンスと思い、ロジャー・ウィリアムズ・ギターを始めました。最初、多くの事を挽回しないといけないので焦っていました。そこで、ノーマン・リードによる講習会に参加しました。ノーマンから学んだ製作法と私の持つ手工技術は非常に貴重なものである事が証明されました。私は常に物事がどのように作用するのかを理解する必要性にかられてきました。そこで、「アメリカ製作家ギルド」や「ギター音響学ジャーナル」ロマニージョスによるトレスの人生や仕事についての本、インターネットの数々の情報等を使い、製作法と設計、音響学について長い期間に渡る研究を始めました。コヴェントリーの製作家、リック・ミドルトンにも会いました。我々は今日に至るまで多くのアイデアや技術を共有しています。

Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?

私の楽器は異なる製作家や設計の優れた点の複合に基づいています。一度評価してもらう為に2本のギターをケヴィン・アラムのところへ持っていきましたが、それはとても有益でした。しかし、私が最大のインスピレーションを受けたのは、側板と表面板は割れていて、ニスはボロボロというとても残念な状態の古いギターを修復するよう依頼された時です。ギター・ケースを開けてみたらセゴビアやジョン・ウィリアムズに一度使用された1955年のエドガー・ムンチが現れた時は驚きました。この楽器には驚嘆しました。あまりの軽量にびっくりしました。この楽器は私が思い描く音を得る為にいかに重過ぎる楽器を作っていたかを明らかにしてくれました。私は家を飛び出てハックリンガー・ゲージ(厚さを計る器具)を購入し、ギターの厚さを計量してみました!私の次に製作したギターは軽量且つ良い倍音成分を含んだ明るい音で、とても改良されました。次の飛躍的な前進はグラナダでアントニオ・マリンと彼の甥達と出会ったときに起こりました。彼らはその後私が更に発展させることになる「マリン・ブーシェ」スタイルの力木を教えてくれました。70年代後半にマリンは伝説の製作家ロベール・ブーシェと1年共に過ごし、マリンの設計に多大な影響を及ぼしました。現在この力木構成の改良版として私は5本の扇状配置と胴体下部を横切るとても軽量な力木を斜めに配置したものを使用しています。これが私のギターの特徴であるバランスと遠達性をもたらしていると思います。私は「グラナダ様式」の軽量ギターを良く製作していて、イギリスのギターとしてはとてもスペイン風の音がすると評価されていますが、明瞭性と倍音成分はイギリス風ならではのものです。

現時点で私は主に3つの種類のギターを製作しています。コンサート・ギターとフラメンコ・ギター(ブランカかネグラ)、フィンガー・スタイルの演奏家のためのアコースティック・ギターで、全て同じプランティージャ(型)に基づいています。 表面板は杉やアルパイン・スプルース、私のお気に入りの後板や肋材の材木は持続可能な資源のイースト・インディアン・ローズウッドです。クルミ、カエデ、マホガニー、イトスギその他を使用した事がありますが、それぞれの木は音に独特の性格を与えますが、クラシックギターの為にはイースト・インディアン・ローズウッドが最も豊かな倍音成分を与える様に思います。今まで非常に多くのブラジリアン・ローズウッドのギターを修復してきましたが、この高価な木はその美しさ以外にも大変感銘を与えてくれます。私は全て独自の縁飾りやビンディング、ロゼッタのモザイクや線を自然な木材から作ります。全ての私のロゼッタはスペインの典型的なモザイクのテーマに沿って独自に手ではめ込まれます。

かつてはかなり実験的な事をしましたが、現在は演奏者の意見や私独自の発見に基づいた改良の継続に力を入れています。「タップ・チューニング」に加えて表面板の従順性や重さを多くの異なる段階でテストし、コンピューターによるサウンド・キャプチャ・ツールでスペクトラム解析して力木配置を追い込み、最終的な箱に私が望む共鳴を得ています。この全てのデータは記録され私の楽器の継続的な改良に使用されます。悲しい事に、製作家の為の万能薬は存在しません。ギター製作は演奏が「練習すればする程上達する」ことに多少似ています。

プロの演奏家はしばしば大きなホールで通用するよう音量のあるギターを探します。そして、これはしばしば音色が欠如している楽器を演奏する事につながります。ラティスやダブル・トップの表面板は音量を増加させる事は出来ますがしばしばバランスのとれた音のパレットが犠牲になります。個人的にはそれに基づく多くギターが発する「ピューン」という鋭い音が好きではないので、それらの設計は使用していません。私にとっては、特に表面板に強化プラスティックが使われているときに、音に訴えるものや性格が欠如している様に思えます。熟練の修復家として見たとき、幾つかの設計の持続性にも疑問があると確信しています。残念な事に多くのアマチュアの演奏者達はそれが何か一層優れたものだと信じて新しい製作傾向に追従してしまいます。私の意見では、良く設計・調整された硬質な木材を使った表面板は居間からかなりの大きさのホールまで、音を満たすのに必要な音量・遠達性・性格を備えていると思います。

Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。

私の全てのギターはそれぞれのギターに応じて、モダンと伝統的両方のシェラックを使ってフレンチ・ポリッシュされています。オイルやラッカーを含めて多くの仕上げ方法を使ったことがありますが、フレンチ・ポリッシュは私の使用している美しい木材の色合いの深さを、私が求める様に引き立ててくれます。私は幾人かの専門家と共に仕事をする事によって私の技術を磨きました。そのうちの一人は生涯グランド・ピアノのニス塗りやニスの塗り替えに携わっている人です。

Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか?

私はカスタム・ギターの仕様を定める為に顧客と共に働く事を楽しんでいますが、クラシックギター市場はとても保守的で極たまにしか異なるスケール長・ネックのサイズ・カッタウェイ・くさび形のボディー・アームレスト・エレクトロニックについて注文を受ける事がありませんが、全て対処可能です。ほとんどのカスタマイズの注文は材料の選択や装飾かチューニング・マシーンですが、私の名前を入れることもよく受ける注文の一つと言えます。私は受注を承諾する前に常に顧客が現在所有するギター、音楽や演奏スタイルについての概略を求めています。そして可能なら実際の演奏を聞かせてもらえる様に尋ねますが、驚いた事に中には躊躇してしまう人もいます。

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