クラシック・ギター製作家:レオナルド・プラットナー(スペイン)

クラシック・ギター製作家:レオナルド・プラットナー(スペイン)

クラシック・ギター製作家:レオナルド・プラットナー(スペイン)
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今回のギター工房インタビューはスペイン、マドリッドのレオナルド・プラットナーさんです。

Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。

思い返してみると私は常にギターが好きでした。楽器として、また芸術作品としてです。十代でエレキギターを弾く様になったときから音楽は私の人生の最も重要な位置を占める様になりました。私が二十歳の時、音楽を演奏する事と平行して地元のギターショップで楽器の弦交換をする仕事に就きました。

私はとても好運でした。この店というのがスイスのジュネーヴにあるヴィセンティ・ギターで、私の最初の師匠であるジャック・ヴィセンティのアンティーク・ギター(エンリケ・ガルシーア、トレス、サントス・エルナンデス等)やその歴史についての彼の情熱に私は感化されました。彼は前述した最も偉大な製作家達によるギターを私が観察したり、演奏したり、調整したりする機会を与えてくれました。また、カルレス・トレパットやマテオ・メラ、ロレンツォ・ミケリ、ステファノ・グロンドーナ等の偉大な音楽家達やアンドレア・タッキやエンリケ・ボテッリ等優秀な現代の製作家達と出会う事が出来ました。そこで8年間働いた後、私は自分の技術に更に磨きをかけ、伝統的な製作法を学びたいと思う様になりました。

それがスペインの最も素晴らしい伝統(サントス・エルナンデス、マルセロ・バルベロ)の後継者と私がみなしているアルカンヘル・フェルナンデスに到達する事になった所以です。当時、アルカンヘル・フェルナンデスは引退間近でしたが、彼の店の後継者がいませんでした。私が彼の工房を引き継ぐ事に興味を示した事で、私に彼の製作方法を教えてくれる事に同意してくれました。私は彼の監督下で2本のギターを製作しました。

アルカンヘルの製作スタイルで私が好きな事は、材料から感じとった直感と極めて正確な技術、材料や仕上げの妥協の無い水準を組み合わせている事です。私にとってこれらの要素は非常に重要な基礎をなしています。

Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?

まず始めに、私はギターはギターらしい音がするべきだと思っています!

良い音のするギターとはどんな単音もその音価間響かせる事の出来るギターだと思います。私はギターはとても不完全な楽器だと信じています。例えば、他の楽器と比較して音量が低いです。そして異なる弦の間で音色の差があります。しかし、この不完全さがギターをとても豊かなものにしているのです!

良いギターは単音、そして如何なる音も音楽的にする事が出来ます。良いギターは演奏者が「ギタリスト」になる前に「音楽家」になるよう誘います。

ギターは繊細な楽器である必要があります。低音から高音まで幅広く豊かな音色を持ち、理想的には1弦が他の弦より秀でているべきです。バンジョーを大きな音でかき鳴らすようなものではなく、ギターは低い音量で演奏されたときに良い音がする事が重要であると思います。

20世紀全般のギターはそのような特徴を持っている様に思えます。

ギターの音は、使用されている材木、製作方法、材料が処理された段取りや期間等、ある特定の楽器そのものの特徴と密接な関係があると思います。あるインタビューでロマニージョス先生がギターをスポンジに例えていました。製作家のエネルギーを吸い込んだスポンジが、究極的にそれを再放出するというものです。私はこのイメージがとても気に入っています。

Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?

ギタリストの音楽的な歌声の生涯になる様な楽器を作らない様にする事がとても重要です。ギタリストの手や演奏スタイルに合わせて調整されるべきです。

Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。

伝統的なシェラックのみを私の楽器に使っています。これはコンサート楽器の為の必要不可欠な要素である様に思えます。しかし、練習用ギター用に傷つきにくい他のニスを使う事に反対ではありません。

Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか?

私はギターの演奏がし易いかどうかに関する数ある要素の中の一つとして弦の長さが関係する、という意見に賛成です。現在の市場のギターや弦の標準規格や650mmの弦長は良く機能していると思います。それより短い楽器に関しては、演奏家の手の大きさではなく、体の大きさに楽器のサイズを合わせる事が重要だと思います。淑女用に鍵盤の幅の狭いピアノはありません。

Q6. 多くの読者がギターを色々と試奏していく内にますますどのギターが良いのか分からなくなってしまう様です。製作家の立場から、楽器店や工房でどのようにギターの音質や弾き易さをチェックしたら良いのか、アドバイスを頂けますか?

楽器を選択する事はとても個人的な事です。全てにおいて喜びを与えてくれる楽器でなければいけません。

自分の楽器以外を試奏する事に慣れていない人は楽器店に足を運び同じ価格帯の楽器をいくつか比較してみると面白いと思います。今日、ギター製作家達と音楽家達のアプローチは本当に多彩なものがあり、全ての人の好みにあったギターを見つける事が出来ます。楽器についての好みがはっきりしているギタリストは製作家と良好な関係を気づく事は良い選択です。同様に、製作家達も音楽家達の視線(レパートリー、演奏者のスタイル等)から見たギターを知る為に彼らと連携をとるべきです。

Q7. 顧客に対してアフター・サービスはありますか? 特に、高額なギターの購入について心配している人たちも多いと思われるのですが。

ギター製作家として、私の楽器を購入した人と人間関係を築く事は喜びです。 それぞれのギターは私の分身です。楽器の世話をする事は私の仕事の一部です。

Q8. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?

これは楽器の世界を超越した問題です。我々が住む消費社会や減少しつつある資源や生物多様性など多くの問題を提起する事になりますが、私の見るところそれは楽器製作を通しても同様です。しかしながら、今の野生動植物を保護する法律によって楽器製作家や楽器そのものに対してペナルティーを課すのは公平ではありません。そして、それらの法律は何世紀にも渡って自然やその資源を恥知らずにくすねてきた国家郡(言うまでもなくその市民達)張本人によって制定されてきた様に思えます。

一日中これらの種を取り扱ってみればそれらの木を愛する事を学ぶ事になるでしょう。私の仕事は木や地球へのオマージュだと思っています。

材料の性能の観点から見ると、良い柾目びき(quartersawn) のインディアン・ローズウッドを使用する事は一般的に市場に出回っている並のブラジリアン・ローズウッドよりも良い選択だと思います。木の種類を選択する上である種の紳士気取りがある様に見受けられます。この事実とは裏腹に、フリードリッヒやフレタ等ある種の名工達は何年にも渡ってインディアン・ローズウッドを使用してきましたが、誰も気にかけていないようです。

Q9. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?

ここ30年間のテクノロジーの飛躍的な前進によってかつて人間によって従事されてきた職業分野に決定的なインパクトを与えた一方で、職人気質とそれに相応しい技術が損なわれた時代に我々はいるように思います。短期的展望や安売り、あふれるばかりの二流な製品の数々等、我々の消費スタイルはヨーロッパの職人の技術にとどめを刺す事に加担してきました。

残念な事に今日の家具職人はほぼ確実に、何世代にも渡って長い間使う事が出来るオーダーメイドのキッチン家具を製作するのではなく、既に加工済みのものを単に組み立てているだけでしょう。

創造的な手作業による職業はとても充実感があります。この純粋な充実感が製作家という職業を何か大変魅力的なものにしているのです。最終的に、手工の楽器製作というのは職人による商業として残っています。常に利益を追求する事は出来ませんが生計を立てる事は可能です。

私は自分の仕事を、政治そしてイデオロギー面で自らの人生のあり方に沿った義務として捉えています。

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