クラシック・ギター製作家:トビアス・ブラウン (オーストリア)

クラシック・ギター製作家:トビアス・ブラウン (オーストリア)

クラシック・ギター製作家:トビアス・ブラウン (オーストリア)
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今回のギター工房インタビューはオーストリア、ウイーンのトビアス・ブラウンさんです。

Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。

私は20代前半の頃に趣味でギター製作を始めました(当時はドイツ文学とジャーナリズムを勉強していました)。1年半本を頼りに独学でギター製作に挑戦しました。 1984年にチューリッヒでホセ・ルイス・ロマニージョスによる初めてのギター製作講習会が開催されたのですが、それに参加する事が出来ました。そこでの3週間が私のギターの音響的、そして美的な土台を築くことになりました。

更なる講習会(1988年のベルギー、アールスト、1992年のスペイン、コルドバ)にも参加し、その翌年1993年にコルドバでの講習会では彼の助手を務めました。それは手工業マイスターの試験の様でした。

私は友人と共にホセ・ルイス・ロマニージョスによるアントニオ・デ・トレスについての有名な著作をドイツ語に訳しました。

1998年にペルヒトルツドルフの私の古い家兼工房からガアデン(ウィーンの南西部から数キロ)の僻地の村の新しい家に引っ越しました。私の職業人生の最も初期から素晴らしいスプルースの木を買い始めたので、とても幸運なことに古い表面板用のストックが豊富にあります。

友人達や同僚達と共に、私は世界の楽器製作家達が参加する会議を9年もの間企画してきました。なぜこの話をしたかというと、他の製作家達と連携して経験や知識を交換することの必要性を深く確信しているからです。

Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?

もちろん私はホセのギター製作法や音の方向性に主に影響を受けています。楽器に取って最も重要な事の一つに、ピアニッシモで奏された時でも、鈍い「デッド」な音でなく、クリーンで歌う明瞭な音が得られる、と言う事があります。私に取っては透明度も重要な点です。バッハが奏された時、声部が容易に聞き分けられなければいけません。他に、暖かく、深みと響きのある低音です。私は自分のギターに多様な音色と幅広いダイナミックレンジを求めています。音量はどうですかって?私は遠達性の方が好きです。

どの様にそれらを獲得するのかですって?私はギターを組み立てる時に気に無理な力をかけません。

私は、その後の所有者の為に1924年製のサントス・エルナンデス(ルイーズ・ウォーカー氏より)と1926年製フランシスコ・シンプリシオ(エドゥアルド・ファビーニ氏より)の複製を作る様依頼された時にたくさんの事を学びました。それらの楽器のお陰でギター製作とスペインの音についての深い理解を得ることができました。

Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?

弾き易さとはとても複雑なトピックです。まず始めに、ギターリストの演奏スタイルや要望を理解する必要があります。楽器を弾きやすくする為に私がする事の一つは、通常より高さのあるフレットを使って製作する事です。逆効果の様に思えるかもしれないですが、これは本当に効果的です。

Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。

私はフレンチ・ポリッシュ以外を試した事がありませんので、人工的な塗料の長所や短所を語るには私は相応しくありません。

Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか?

640mmより短いスケールのギターを作った事はまだありません。(ショートスケールは)小さな手を持つ演奏家にとって便利でしょう。特に、私の日本と中国の顧客はその理由でショート・スケールを注文されます。

しかし !スケールを短くするのは弾き易さを向上させる為の最初の選択ではありません。私は650mmなどの「長い」スケールが持つ音の長所(とくに低音と弦のテンションの選択の幅)を失いたくありません。私の経験では、例えばネックの幅や厚さなど、小さな手を持つ演奏家に最適化する事ができる他の要素が色々とあります。

今のところショート・スケールのクラシック・ギターの需要に伸びは見られません(ウィーンやフランスの19世紀前半の歴史的楽器のレプリカを除く)。

Q6. 多くの読者がギターを色々と試奏していく内にますますどのギターが良いのか分からなくなってしまう様です。製作家の立場から、楽器店や工房でどのようにギターの音質や弾き易さをチェックしたら良いのか、アドバイスを頂けますか?

質問はよく分かります。私の経験では、試奏していくうちにどのギターが良いのか分からなくなってしまう原因は2つ考えられます。

  1. しばしば演奏者はどんなものを求めているのかはっきりとした考えがない(ごめんなさい)
  2. 多くの人が幅広い種類のギターを弾いた経験が無い

肯定的に言うと演奏者がどんな音が欲しいにか明らかなヴィジョンがあれば、理想的なギターを探す上でそんなに問題はないでしょう。

私の工房を訪れた演奏者には「どんな音を探しているのですか?」とまず始めに質問します。信じられない事にほとんどの人達は詳細で深い返答をするのにかなり考え込んでしまいます。

私のアドバイス:
あなたの演奏の技術と要望を把握して下さい。幅広い範囲のギターの音を知って下さい。なるべく多くの古い、そして新しいギターを弾いて経験を積んで下さい。良い演奏録音を聴いて下さい。同じギターを2人かそれ以上の人に演奏してもらった音を聴いて下さい。

Q7. 顧客に対してアフター・サービスはありますか? 特に、高額なギターの購入について心配している人たちも多いと思われるのですが。

もちろんあります。私の全ての顧客は新しいギターを購入してから約2週間後に演奏のしやすさをチェックする為に工房を訪れることができます。多くの演奏者は新しい楽器に慣れるまである程度の時間が必要です。その後ナットとサドルを要望に応じて調整します。

他に、最初の所有者には木材とクラフツマンシップに於ける無制限の保証があります。これでかなり安心して頂けると思います。

Q8. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?

私は幸運にも一生分以上の材木(特にスプルース)のストックがあります。なぜか過去にブラジリアン・ローズウッドを買った事が一度もありませんが、良質で古いインディアン・ローズウッドが私の工房にたくさんあります。技術的、そして音響的な特性からインディアン・ローズウッドを気に入っています。ブラジリアン・ローズウッドの代用品として私のお気に入りの一つはステインウッドです。とても硬質、高密度で重く、見た目がとても気に入っています。熱加工されたメイプルやスプルースはギター製作するのに最高の材料です(写真を参照)。

Q9. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?

あなたの質問にはいくつかの側面があります。

今日世界中にたくさんのギター製作家達がおり、「どうやって生計を立てているのだろう?」と自問しています。職人の質は一般的に高いです。誰でもインターネットやユーチューブで何でも知ることができ、30年前とは大違いです。若い製作家にとっては自分の場所、自分が大勢から抜きんでることを可能にしてくれる「ニーシュ(niche)」を見つける事がとても困難です。

他の面では演奏家達があります。あなたが前述した様にかなりの数の演奏家達が、(ギターの)膨大な量の伝統、様式、モデルや材料によって混乱している印象を持っています。

誰かがギターの品揃えの良い店を訪ねれば、トレス/サントス/ラミレス、又はブーシェ・スタイルかラティス/カーボン/ノメックスの表面板といった範囲で選択する事が出来ます。どんなギターが「生き残る」のかを予想するのは難しいです。

ギターの未来がどんなものであるかわかりませんが、ソリッド・トップで出来た楽器が弾かれ続けるよう願っています!;-)

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