クラシック・ギター製作家: ショーン・ニューマン (イギリス)

クラシック・ギター製作家インタビュー: ショーン・ニューマン (イギリス)

クラシック・ギター製作家便覧プロジェクト第二弾はイギリスのショーン・ニューマンさんです。

 

Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください

私は20年程前に主に本や私たちのローカル・コミュニティー・カレッジの夕方のクラス等の助けを借りてギター製作を始めました。私の最初の3本のギターはプロのコンサート・ギターリストによって演奏され、それらが私の最初の受注につながりました。私の20年のギター製作人生の中でクラシック・ギター(フル・サイズと共に数々のショート・スケール・「サロン」ギター、そしてトレスやフランス・スタイル)を製作してきました。また、ゴシック、そしてケルト・ハープ、マンドリン、ドゥルシマーズ(dulcimers)、ウクレレ、そして中世のフィドル(ヴァイオリン)等も製作してきました。現在ルネッサンス・リュートを製作しているところです。

 

Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?

ギターにとって最も重要な要素は音です。その鍵は、主に構造と、トップ(表板)の品質にあります。堅いスプルース(松)やシダー(杉)などを材料とし、必要な密度を得るためには、1インチあたり最低でも20個の木目が必要です。シダーは松よりパンチがあり、サステインの短い音を出す傾向があり、フラメンコのギターリストに好まれます。松は音をより持続でき、表現豊かな演奏家に楽しまれています。最近の製作家には薄いノーメクス繊維のフィルムを松と杉で挟んだものをラミネート加工したものを使う人たちもいます。私の好みのトップはエンゲルマン・スプルースを低音側を2mm、高音側を2.5mmの厚さにしたものです。トップは木目の良い松の力木で注意深く補強されなくてはいけません。私の力木は厚み3mm以下、4mmの深さで、桁の強度を与えます。年々様々な試みがなされ、最近の製作家達は力木にカーボンファイバーで出来た格子構造を用いる人たちもいます。私の耳には、格子構造は音量を増大するのみで、音質には何の貢献も無い様に聞こえるので、未だに松を用いた扇型の補強を用いています。最後に、バック(裏板)やサイド(側板)も良い音にとって重要です。ブラジリアン・ローズウッドが恐らく最も好まれている材木でしょう。私はイトスギ、ローズウッド(共にブラジリアン、インディアン)、カエデ、ジブラウッドを使ってきました。現在ジリコテを使ってコンサート・ギターを製作しています。それらの木材は全て異なる働きをしますが、トップが良く出来ていれば良い音が望めます。

 

Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?

弾き易さを獲得する事はとても重要な事です。そして演奏家はそれぞれ独自の要望があるでしょう。まず大変滑らかな指板から始めたいと思います。通常エボニーで作られ、スムーズなエッジを保証する為に、手作業で一つずつ個別にフレットを作り、打ち込んできます。これにより、不快な引っかかりは全くありません。骨で出来たナットとサドルは演奏者の好みに合わせて作ります。ジュリアン・ブリームは6弦上12フレットで5mmのアクションを使用していた事で有名ですが、他の演奏家はたった2〜2.5mmの低いものを好みます。アクションは弦のテンションとバランスを取らなければいけません。ハイ・テンションはロー・テンションより演奏しにくいとされていますが、音量と輝きを与えてくれます。ロー・テンションは表現派の演奏家に向いてる傾向があります。私は演奏者のスタイルに合った弾き易さを見つけるまで、上記の調整をする事を常に強調しています。

 

Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか? 

私はいくつかのショート・スケールの楽器を製作しましたが、単に手が小さい演奏家のみならず、19世紀等のプログラムに合った演奏をしたい演奏家達から大変好評でした。通常音量が犠牲になりますが、トップが良く出来ていれば良い演奏家はこの小さいギターでコンサート・ルームを音で満たすことができます。トップが合板で出来た小さい初心者用ギターは避けた方が身の為です。そのようなギターは演奏者を励ますどころか嫌気をおこさせます!!私の小さいギターのお気に入りの弦長は605mmです。これは通常のクラシックやフラメンコ・ギターの1フレットをナットと見なして演奏するのと同じスケールです。小さいギターの場合、適正な補正が重要です。この場合弦高を最大3mmほど高くする必要があります。私は常に3弦に少量の補正を加えます(3弦は太い為)。これはその弦のみサドルの傾斜を逆にする事で達成しています。

 

Q7. 顧客に対してアフター・サービスはありますか? 特に、高額なギターの購入について心配している人たちも多いと思われるのですが。

私は常にアフター・サービスを提供しています。楽器が演奏者に合う様、アクション等の調整などの他にも色々承ります。私の一般的なアドバイスとしては、楽器を1週間ほど自宅へ持って帰り、それが自分に相応しいか試してみる事です。人々は3種類の方法で楽器を購入する傾向があります。ある人たちは目で選びます。視覚的に魅力的なギターが彼らの心をつかむのです。別の人たちは推薦によって購入します。そして、3つ目の方法は音で選ぶ、と言う事です。私のアドバイスは最も良い音がすると思うギターを選択する事です。あなたを夢中にさせる音、そして常に出したいと思う音がするギターを選んで下さい。

 

Q8. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?

ブラジリアン・ローズウッドなどの人気にあるいくつかの木材は現在ほとんど入手不可能なのは疑いの余地がありません。しかし、硬質で、ただ単に熱帯地方の程度の悪い合板でない、と言う条件で、良い音がするギターを作ることができる持続可能な代替手段もたくさんあります。ジリコテはオーストラリアン・ハードウッドと並んで現在注目を浴びています。カエデは非常に良い代替材料で良質の小さい楽器に向いています。多くのフラメンコ奏者は「フラメンカ・ネグラ(ローズウッド・フラメンコ)」の出現にもかかわらず、未だにイトスギに固執するでしょう。

 

Q9. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?

将来は演奏家にかかっています。70年代は誰でもジョン・ウイリアムスやジュリアン・ブリームを知っている時代で、イギリスでのクラシック・ギターの売り上げのピークを迎えました。現在はクラシック・ギターは少し特殊なものと見なされています。したがって、良いギターの先生達がギター製作家達の事を口コミで拡散してくれる事がとても重要なのです。もちろん製作家達も出来る限り良い音を提供しなければいけません。