クラシック・ギター製作家インタビュー: マヌエル・コントレーラス(スペイン)

マヌエル・コントレーラス

今回のギター工房インタビューはスペイン、マドリッドの工房、マヌエル・コントレーラスの、ビクトリア・ベラスコさんとホセ・アントニオ・ラグナルさんです。

Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。

我々の工房の創立者であるマヌエル・G・コントレーラス(1928ー1994)は、何年もの間名声の高い家具職人として活躍した後、ホセ・ラミレス3世の工房で2年間働く事によってギター製作の世界に入り、1962年に独立しました。

彼の職人人生に於いて、「1a Especial」、「ダブル・ハーモニック・トップ」システム(1974)、「カルレバロ・モデル」(1983)、「外部共鳴後板」又は「共鳴」システム(1985)などの大変重要なモデルの発明や発展、彼の製作する楽器の音質、美的の両面における品質の高さにより、世界的な名声を勝ち取りました。これらの土台は、今も私たちの楽器製作に明白な方向性を残しています。

パブロ・マヌエル・コントレーラス(マヌエル・コントレーラス2世)は長い年月父親の工房で働く事によってこのギター製作を学びました。1994年のマヌエルの死去後、工房を引き継ぐことになります。 

大の音楽愛好家であり好奇心旺盛な彼は、自らの音を求めて研究を始めました。それは後に表面板の様々な部分を変更したり、ギター内部に「共鳴後板」を導入した「10周年記念モデル(1998)」 の発明に至りました。このモデルは2000年にホアキン・ロドリーゴ・インターナショナル・ギター・コンクールで受賞しました。

2011年1月のパブロ・マヌエル・コントレーラスの早すぎる死去の後、工房コントレーラスはマヌエル・コントレーラス父にギター製作を学び、1995年から1級製作家として携わってきたギター製作家、ホセ・アントニオ・ラグナルと、RCSMM(マドリッド・王立音楽院)でギターを学び、80年代後期から音響学や音楽に於ける知識を提供してきたビクトリア・ベラスコによって引き継がれました。

 

 

Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?

ギターリストにとっても、ギター製作家にとっても「完璧」な音を追求する事は最も重要な事です。その「理想的な音」は個人的な好みによる側面が多々ありますが、常にこの追求の道しるべをしてくれる要点があります。

私たちの工房としての沿革で、大多数の音楽家やギターリストの要求を満たす様、常にその理想的な音を追い求めて来ました。

マヌエル・コントレーラスは基本的に、ギターの音質やその暖かい音を失う事無く音量が大きくて力強いギターを提供する事に彼の製作家としての人生を捧げました。力強く深い低音、金切り声の様になる事の無い、パワフルで暖かい高音。そして、特に低音と高音との間の整ったバランス。

マヌエル・コントレーラス2世は既に達成されたそれらの事柄を保ちつつ、更に音の立ち上がりの良さ、つまりギターリストが弦を弾いてから楽器がそれに反応するまでの即時性を最大化する事に尽力し、正にそれを達成しました。

現在の我々の目標は、上記した、音の持つ「ボディ」や暖かみ、音色の多様性を失う事なく音量や遠達性を可能な限り最大化するための追求や研究を継続していく事です。

ギターが演奏家に最も多様な音色を得る事を可能にする事は大変重要だと考えています。音色にニュアンスを与えることができる楽器は音楽を演奏する上で必要不可欠です。

 

 

Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?

ギターリストの声に耳を傾け、彼らの要望を知る事はとても重要な事です。長い経験によってネックの形状と厚さに於いて標準形を導くことができましたが、私たちは常にギターリスト達が形(更に平ら又は丸みを帯びたもの)と厚さを選択できる変更可能なゆとりを提供しています。

全ての手は異なり、例えばとても平べったいネックはある人にはとても快適でも、他の人たちの手を疲れさせてしまう事もあります。

一方で、フレットの形状や高さが思慮深く施されている事が大変重要です。これはクリーンで音程の良い音を得る為に必要な弦を押さえる為の強さに直接影響し、セーハをする時に不必要に手が疲れてしまわない為です。

 

 

Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。

長い年月の間異なるニスを使ってきました。現在は明確に表面板が振動しやすく、立ち上がりの良い音を得ることができるフレンチ・ポリッシュを好んでいます。とてもデリケートですが、取り除いて新たに施す事もまた簡単です。(ニスを取り去る為に)表面板を削る必要がないため、その厚さをオリジナルの状態のまま無傷で保つことができ、その結果楽器の持つ音の性格を保つことができます。

後板と側板にはある一定の堅さを与えるポリウレタンを使う事を好みます。後板と側板が表面板の振動を吸収しない事が、最終的にギターの音の反応を良くする為にとても重要だと考えます。

 

 

Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか? 

私たちは常に標準サイズの650mmより短いものから長いものまで様々な選択肢を提供してきました。650mmは引き続き最も需要があります。私たちはいくつかの例外的に長い、又は短いスケールのギターを作ってきましたが、「特別なスケール」の中で最も需要があるのは間違いなく順に640mmと630mmです。

これらの楽器のほとんどは日本やアジアの国々へ輸出されますが、日毎に世界中の手の小さい演奏家達や若い演奏家、特に女性達の間で需要が伸びています。

実際に650mm、640または630mmの間で大きな音の違いはありませんが、手の快適さに於いてとても大きな違いが感じられます。手の小さな演奏家達がテクニックや音楽性をより良く発展することを助け、結果としてより良い音を楽器から引き出す事が出来ます。

 

 

Q6. 多くの読者がギターを色々と試奏していく内にますますどのギターが良いのか分からなくなってしまう様です。製作家の立場から、楽器店や工房でどのようにギターの音質や弾き易さをチェックしたら良いのか、アドバイスを頂けますか?

中級/上級レベルの技術を持つギターリストは楽器を「評価する」のではなく、楽器がその演奏者の音や快適さに対する要求に答えたときには明白にそれを「感じる」のだと思います。ある人たちは彼らを満たしてくれる楽器を弾いた瞬間、又は暫くしてお互いの勝手が分かると、「アットホームな感じがする」とか「恋に落ちる」とそれを表現します。

しかし、アマチュアの演奏家達や経験の浅い人たちにはやはり更に困難が伴うかも知れません。

もちろん、経験を深め、求める楽器の判断基準を得る為には日頃から色々な楽器を試奏する事に慣れるのが一番です。そして、良くも悪くも、普段から弾き慣れた、または習い始めて1年目の時のギターにあまり固執しない事です。

実際に楽器を選択する際、前述した経験の他に2つアドバイスがあります。音色やギターの音のバランスと共にその弾き易さが本当にに良いと感じる事。それから、最終的な決断は個人的なものであるべきですが、他の人たちにギターを弾いてもらってその音を十分にリラックスした状態で、第三者として聞いてみる事もとても有益です。

 

 

Q7. 顧客に対してアフター・サービスはありますか? 特に、高額なギターの購入について心配している人たちも多いと思われるのですが。

我々の作るギターは必要な際にはいつでも「実家(私たちの工房)」にて必要な処置が受けられる旨を常に顧客に伝えています。

もちろん、重要な問題が合った場合は楽器の交換を含めて、完全な保証を提供します。とは言うものの、これらの品質水準のギターでそのようなことになる事は普通ありませんが。

この保証は期間というより、論理に基づきます。つまり、ある問題が発生したときそれが普通なのかどうか、取り扱われた条件や適正に管理されたか等です。

諸外国から郵送しないといけない場合、我々の販売代理店を通して常にその代金についていずれかの方法でその問題を解決します。保証の場合は、運送料を折半します。

 

 

Q8. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?

法律的な問題により、私たちはもうかなり昔にハカランダを使う事を止めました。それ以来、私たちはマダガスカルのパロサントや、もうかなりの頻度で使用することになったココボロ等の他の木材を使っています。これらの変更は楽器の品質に全く影響を与えません。今のところこれらの木材に対する大きな規制の問題もありません。

製作の際に必要な、適正な熟成や乾燥が保証された木材のストックは私たちの短・中期の将来までは確保されています。

 

 

Q9. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?

ギター製作の世界は本当に盛況です。世界中の工房の数、この職業を愛する人たちの数を見てみると、姿を消すどころか、まさに開花まっただ中の職業だといえます。それは私たちの楽器の将来に取って良い事です。研究と発展を意味する事は何でも良い事ですし、諸外国で私たちの愛する楽器に対する関心や趣味が広まる事もそうです。もちろん、常に品質水準が保たれ、機械生産する事から逃れる事が出来れば、という条件付きですが。

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