クラシック・ギター製作家:アマリア・ラミレス / ホセ・ラミレス(スペイン)

クラシック・ギター製作家:アマリア・ラミレス / ホセ・ラミレス(スペイン)

今回のギター工房インタビューはスペイン、マドリッドのホセ・ラミレス工房の5代目アマリア・ラミレスさんです。​

 

Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。

ここで要約するにはあまりにも古く長い歴史があります。我々の工房は父から息子達へ直伝されるスペイン・ギターの工房の中では最も古いものです。創始者は私の曾祖父であるホセ・ラミレス一世で、1870年に12歳でこの職業を学びました。しかしながら、最近の研究では、(当時の全てのギター製作家と同様)木材の同業者組合に属していた彼の父親もギター製作家だった可能性が指摘されています(ホセの他、ホセ・マヌエルとアントニオという息子達3人全員がギター製作家だった事もその根拠に挙げられています)。

ホセ(ラミレス一世)は彼の弟マヌエルにギター製作を教えました。マヌエルは同様に彼の息子ホセ(ラミレス二世)に、ホセ(ラミレス二世)は彼の息子ホセ(ラミレス三世)に、そして三世は私の兄(ラミレス四世)と私にその知識を伝授したのです。現在私がこの事業を管理しており、甥達(ラミレス四世の息子達)、ホセ・エンリケ(ラミレス五世)とクリスティーナにこの仕事を教えています。私の家族の工房からはサントス・エルナンデス、ドミンゴ・エステソ、エンリケ・ガルシーア、モデスト・ボレゲロ、その他の名工達が輩出されました。私達の工房がマドリッド派ギターの重要な役割を担った事は確かです。

 

Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?

私にとってギターはニュアンスが豊富で色彩豊か、応答性に優れ、ギター奏者の演奏の仕方に順応し、奏者と共に進化すべきものだと思います。音量は重要ですが音色が犠牲になるべきではありません。私はあたかも音楽で絵を描いているかの様に色彩豊かな色を引き出すことができるギターリストの演奏を聞くのが好きです。この音を獲得するには、先代達、特に私の父ラミレス三世の教えを継承しています。彼等は常にその基本を尊重しつつ、進化可能な要素を加えた仕事と研究を残してくれました。ラミレスの音はとても特徴的です。進化の過程で革新や変更をしたとしても、私にとってこの音を守り続ける事は何より重要です。

 

Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?

私の父の時代、私達のギターは「巨人の為のギター」として有名で、弾きこなす為に努力が必要だと言われていました。私の兄は今まで同様の構造で最高の安定性を獲得しつつ、張りを弱くし若干細いネックを可能にする組み立て法を求めて快適なギターを製作するように努めました。しかしながら、一度貼られたレッテルを覆す事が容易ではなく、今でも私達のギターは演奏しにくいと思っている人がいますが、それは事実ではありません。弾きやすいギターは快適であると同時に音がビビらない為適正な張りでないといけません。ネックの幅も弦長と同様に重要です。私達のギターは664mmより快適な650mmの弦長です。私の兄は以前の650mmと比べてより大きい音量を得る事を達成しましたが、それでも640mmの方がやや遠達性があります。私達の寸法と大きさは約100%我々の顧客に受け入れられていますが、もしタッチや演奏の仕方、個人的な好みによってカスタマイズが必要であれば我々の工房に来訪して頂いて個人に合った調整が出来る事を知って頂く事は重要です。通常あまりないですが、念のためこの可能性について触れておきました。

 

Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。

我々は両方の塗装を使います。しかしながら、少なくとも我々が使うものに限って言うと、合成塗料を支持します。フレンチ・ポリッシュは実際に殆ど木を保護しませんし、小さく結晶化してしまうので、木全般の木目上の音の伝搬に有利ではありません。加えて、特に使用による痛みが激しいネックは定期的に修復する必要があります。ところが私達の使用している合成塗料は美しく柔軟な幅の広い結晶に結晶化し、音の伝搬に有利ですし、木を保護します。気孔を塞ぐ為に下地を施してあるにもかかわらず、この塗料は時間と共に木の樹脂と混ざって音を豊かにしていきます。表面板が振動するのですが、その振動はギターリストが楽器を演奏するその有様によって振動します。そしてそれがある一定の方法で何回も繰り返されることによって表面板にその振動が「転写」されていきます。その演奏家の持つ音がギターの持つ本来の音と混ざっていくのです。私の意見では、我々の合成塗料を使った時の方がフレンチ・ポリッシュの時よりもそれが顕著に現れると思います。

 

Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか? 

ショート・スケールのギターはより演奏しやすいですが、弦長を切り詰めていく程音質やもちろん音量が失われていきます。もちろん手の小さい人達による需要はあり、遂に弦長638mmをオプションで提供する事を決定しました。音に関しては現代的なギターの中では許容出来るいくつかの特徴を持っていますが、遠達性は若干低いです。一方古典楽器の方は適正な寸法を伴えばとても美しい音がするかも知れませんが、遠達性は更に控えめです。

 

Q6. 多くの読者がギターを色々と試奏していく内にますますどのギターが良いのか分からなくなってしまう様です。製作家の立場から、楽器店や工房でどのようにギターの音質や弾き易さをチェックしたら良いのか、アドバイスを頂けますか?

私の考える最良のアドバイスは、心で感じてギターを選択する事です。気分を良くしてくれるギターを選択して下さい。沢山のギターを試奏する場合は間違いなく混乱するでしょう。 そんな時は一晩ゆっくりと枕と相談し、少なくとも1日が過ぎてから、「眠気」を取り去ってくれるギターを選んで下さい。

 

Q7. 顧客に対してアフター・サービスはありますか? 特に、高額なギターの購入について心配している人たちも多いと思われるのですが。

もちろんアフター・サービスは基本です。顧客の満足感は気に入ったギターを持ち帰られた時だけでなく、調整が必要な時には我々がそれを提供する事で得られます。もしギターが何かの事故にあった場合は新品同様に修理しますし、ギターにとって最も相応しいアドバイスを無償提供します。ギターの最適な保存の仕方について説明したパンフレットを常に同封していますが(私達のホームページにもあります)、ギターの所有者がそれを熟読する事は将来トラブルを防ぐ為にとても重要です。

 

Q8. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?

私達はハカランダから密度と見た目がとても良く似ているマダガスカル・ローズウッドに切り替えました。 いずれにしても、人生、いかなる状況でもあるものを使って適応していかなければいけません。親しみのある長年の工具、手触り、私達の手中で形作られていくギターに対する注意深いこだわりと共に、木材とやり取りしていく事が好きなので、我々は製作方法の多くの点で可能な限り「原始的」であり続けます。

 

Q9. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?

愛情と知識を伴って作り出されたものは常に前進するための道を見いだしていくと思います。 このように私は楽観主義者です。

コメント

荒井史郎さんの紹介で2016年6月に工房に訪ねました高田直哉です。