クラシック・ギター製作家インタビュー:アラン・ステュワート・ウィルコックス(イタリア)

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今回のギター工房インタビューはイタリア、フィレンツェのアラン・ステュワート・ウィルコックスさんです。

 

Q1. あなたの工房とその歴史についてお聞かせください。

1966年にニューヨークのアマデオを訪れ、私が作ったギターを見てもらいました。彼に「あなたは道具の使い方を知っていますね」と言われました。ベラスケスにプエルト・リコの彼の工場(従業員80人、混沌とした状況)を訪れる様に言われました。アマデオは私が面会する事を申し入れても、彼が力木を接着しているときは決して承諾してくれませんでした。私はネックはボディーに対して角度を付けるのかどうかを知る為にルビオに電話をしました。彼の奥さんに「私の主人と話す前に100台ギターを作りなさい」と言われてしまいました。これで独学で行く事を選ばない訳はありません。

 

Q2. あなたにとって良い音のするギターとはどのようなものですか?またそれを獲得する為にどんな工夫をしているのですか?

この質問、又は私の返答は異なり、それこそが秘訣なのです。俣野氏*のインタビューがありますが、彼の「メス・アル・プント」テクニックが無ければギター製作は全く違ったものになっていたでしょう。唯一、どこからどれだけの分量の木を取り除くかを精密に見極める事がそれぞれの段階で良い結果をもたらすのです。

 

注: *俣野 勝氏: 日本の楽器業界誌「ミュージックトレード」1972年10月号に掲載されたストラディバリウスの歩んだ道を歩きたいのです

 

このインタビューは私の方法と違うとはいえ、他にもギターを調整する人達がいることを知らせてくれました。そして、私はラミレス1世を研究することによって、後板の上部、高音側がかなり削られている事を発見しました(サウンドホールまで届く、紙ヤスリを巻いた棒で効果が最大限になるまで調整する)。このギターの所有者は幾度かに渡って彼女の所有する私が製作したギターに施されたものと同じ調整をこのギターにもする様に私に依頼しました。彼女のギターに施すことが出来る有効な変更はほんのわずかしかありませんでした。

(占い杖で鉱脈を探すように)箇所を探すのが答えです。そして私はそれぞれのギターが最大限に潜在能力を発揮するまで何百もの正確な手直しをします。ギターを弾き込んでいくうちに通常調和し、新品の時の状態以上に向上します。

それぞれの製作家は結果を調整する方法をいくつか持っています。まず、直感、そして設計する時に変更するいくつかの方法です。ある日、パヴェル・ステイドゥルと会話をしていて、トレスの話になりました。そして、トレスこそ唯一の我々のギターの為の設計だと言う事で合意しました。その設計は今でも現在のラミレスによって受け継がれています。ダマンは彼のプロジェクトを「低周波数ギター」であるトレスをコピーする事によって始めました。

他の製作家と話していて合意する事は、それぞれの製作が各々の唯一の音を持っていると言う事です。よって、誰もトレスを複製する事によってトレスの音を再び蘇らせる事は出来ません。人々は言います「アラン、あなたのギターはあなたの音がする」と。ギターリスト達は私に「あの明瞭な音が欲しい」と言います。
もちろん、バランス、音程、音量、幅広い種類の音色、そして、雑音の無い事。

エリオット・フィスクは 私に「どうしてあなたのギターは完全な音程を持っているのですか?そのようなギターを見つける事はほぼ不可能です」と述べました。フレタの指板は間隔が間違っているので、取り去らなければなりませんでした。

 

Q3. 弾き易いギターを製作する事について考えをお聞かせください。そして、その為にどんな工夫をされていますか?

しばしば、表現力を弦に求め、とてもロー・テンションで柔らかい弦を繊細なタッチで演奏する様に教えられているアルベルト・ポンセの生徒達と仕事をしますが、それは私のスタイルではありません。

とても小さい手の顧客の為に647mmを設計した事があります。我々はネックを細くする事によって弾き易さが向上する事を発見しました。緩い弦のテンションと音程はメス・アル・プントで調整します。メス・アル・プントをするときは常にA=440Hzで調弦します。あるギターリストは「あなたのギターは他のギターと違って(調性が)Aの時、他のものより音量が大きい」、と言われました。調弦する時、私は弦の動きを見ます。古いギターの弦は弾かれた時何回も繰り返されるアーチを形成します。(ステディル)純粋な動き。また、後板や表面板を指でタップする事によって得られた結果を確認します。しかし、タッピングは私の調整方法ではありません。カーシャ・ギターを作ったリチャード・ シュナイダーはタップ・トーン法を使いましたが、ロイ・ホーバー(マーティン・ギターの技術コンサルタント)はこれは設計ではなく彼らの演奏法だ、と言っています。
 

フィレンツェでは「私たちはセゴビアの友人で、もしあなたがラミレスの様に製作しないのであればあなたのギターは使わない。664かもしくは667。杉のほうがよく鳴り、待つは目覚めが遅い」と言われました。

二つ嘘があります。杉のギターを作ったので、他の客も杉のギターを欲しがりました。今日、多くの人は664(私のギターはそうでした)を欲しがりません。640を設計した後、アントニオ・マドンニが電話で「まだほとんど製作し始めてないの!?だったら松を使ってくれ、大きな音量が欲しいんだ」と言ってきました。

フィスクは私に「664はラミレスの大きな間違いだった」と言いました。世界中でエリオット程の大きな手を持つ人はいません。彼の美しい杉のラミレスは12年後に甘みを帯びてきました。「このギターの後はもう2度と杉はごめんだ」。

 

Q4. 伝統的なフレンチ・ポリッシュ(セラック・ニス)や新しい方法(ラッカー、触媒)などの仕上げの方法について、あなたの考えをお聞かせください。

人工的なニスは使った事がありませんが、短所を予想する事は出来ます。セゴビア(1984年、フィレンツェ):「このあなたが私の為に作ってくれたギターは開放的で、自由に弾くことができる。私のラミレスのギターの1弦は木感的で、何ヶ月後かには閉じてしまった」。マドリッド:「ラミレスはこのギターを修復する代わりに新しいギターをよこしたいようだ」 

新しいラミレスを慣らすのに8ヶ月かかり、ニスがあまりにも厚すぎてその影響を受けた音のバランスを取る為に表面板の木を削ぎ落とさなければならなかった!

殆どの製作家の仕事(芸術)は表面板と後板にテンションがかかっていない状態で調整され、一体化し、共鳴させる事です。これは音楽がより完全になる為に必要な事で、イダ・プレスティの様なギターリストはそのような音楽を追究する事が出来ます。

ということで、私はフレンチ・ポリッシュは音を向上させ、固めるのに十分だと思います。

 

Q5. 640, 628 や 615mm などのショート・スケール・ギターに於いて、弾き易さ、設計、音質や音量の観点から、あなたの考えを聞かせて下さい。また、手の小さい人や女性ギタリストの増加によってそれらショート・スケールの需要は伸びていますか? 

私は約25から30台の小さいギターを製作しましたが、驚いた事に大きいギターにとても近い音を得ることが出来ました。私はその専門家ではないので、これ以上の意見を述べるのは気が引けます。40年前私の家には1889年製、630mmのマヌエル・ラミレスが8ヶ月間ありました。とても気品が高い。25年前小さいギター製作を依頼され、その輪郭(内部ではなく)を使いました。4ヶ月前、微調整を施す為にそのギターが1週間ここに戻ってきましたが、それは私を喜ばせました。遊びで、あと2台小さいギターを作りましたが、力木配置を新たに設計しました。大きな音量に完全な音色が得られました。

 

Q6. 多くの読者がギターを色々と試奏していく内にますますどのギターが良いのか分からなくなってしまう様です。製作家の立場から、楽器店や工房でどのようにギターの音質や弾き易さをチェックしたら良いのか、アドバイスを頂けますか?

滅多にここで問題になる事はありません。

ギターはギター奏者を気に入らないかも知れませんが、それを試奏する者は会話を始める為に相手のギターをもっと良く知りたい、という意欲がある事が重要です。これはギター奏者が、ギターを知ろうとする代わりに、そのギターが彼の為にどんな事をしてくれるのだろう、等と考える事によって得る事が不可能になります。

アルベルト・ポンセは私たちの多くに1972年のフレタの話を語ってくれました。「それが3台目か4台目かは覚えていないけれど、ネックをつかんだ瞬間「これこそ私のギターだ』、と叫んだのだ。そして、『そう、私はあなたの事を考えてこのギターを作ったのだ』、とフレタは答えたのだ」。

 

Q7. 顧客に対してアフター・サービスはありますか? 特に、高額なギターの購入について心配している人たちも多いと思われるのですが。

ルカ・ピエルパオーロ・ダモーレ(youtube) が昨日パリから電話をしてきて、来月私を訪れるつもりである事を伝えてきました。それは私が作った彼の2台目のギターです。私は彼のギターをここ3、4年に1回以上調整しました。そのギターは向上し続けています。1年半後、彼は「遂に我々はお互いを知り始めてきた」と私に言いました。彼がある種のヴォイシングを求めた時、ギターは彼が手に負えない程のものを提供したのです。私は調整を示唆しましたが、かれはこれ以上は不可能だと躊躇しました。私たちは長年の友人です。彼や、その他の真面目な演奏家達はアルベルト・ポンセの卒業生です。

 

Q8. ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)などの木材がますます入手困難になってきていますが、それはあなたのギター製作や完成したギターの品質にどのような影響があると思いますか?

インディアン・ローズウッドは良いです。かかった力にも受ける影響が少なく見えます。リオはもっと簡単に割れます。

 

Q9. 21世紀に於いてギター製作というこの美しい伝統はどうあるとお考えですか?

今地球上では才能のある若い演奏家や製作家で活気づいています。素晴らしい文化的資産です。

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