フラダリーク(フェデリコ)・モンポウ - 1: 原点回帰・プリミティズム・鐘の音他

フラダリーク(フェデリコ)・モンポウ - 1: 原点回帰・プリミティズム・鐘の音他

私の人生の全てが私の心の最も奥深くで発展し、そこに創造される。

 

フラダリーク・モンポウ・イ・ダンコス/Frederic Mompou i Dencausse (バルセローナ, 1893年4月16日—1987年6月30日)、又はフェデリコ・モンポウはスペイン、カタルーニャの作曲家兼ピアニストです。モンポウと聞くと恐らく彼のピアノ作品がまず最初に頭に浮かぶかも知れませんが、他にも歌とピアノ、バレー、合唱とオーケストラ、そしてギターの為にも作品を残しています。

 

モンポウの音楽は率直で直感的、そして奥深く、単純かつ複雑、ミニマリズム的でロマン派的、経験的で知的、アルカイックで近代的、伝統的かつユニバーサル、というように数々の矛盾する要素が彼の実存的な孤独の中で消化され、音楽という新たな形に昇華された結果、真正で魅惑的、時代を超越した作品となったのです。

 

 

原点回帰(レコメンサメント/Recomençament)とプリミティズム(原始的芸術):

 

私がこのような音楽を作るのは芸術が限界まで到達してしまったからです... 芸術は原始的な原点に回帰するのです。

 

Mompou joven piano 1920 aproxモンポウはエリック・サティー、クロード・ドビュッシーやガブリエル・フォーレなどフランスの作曲家達に強い影響を受けましたが、単に印象派の伝統を引き継いだり、その当時の潮流であったストラヴィンスキーやシェーンベルクなどの新しい傾向に加わる代わりに音楽史の最も原点に回帰する事を選択しました。 

モンポウはこれを「原始主義」と呼び、グレゴリア聖歌やカタルーニャ民謡等過去にインスピレーションを求めました。モンポウは簡素化を押し進める為しばしば音楽的発展(楽章等)、拍子記号、調号、小節線などを楽譜から排除しました(これはエリック・サティーの様式を継承したといえます)。

この表現力や感情、音そのものに於ける純粋性の追求は、モンポウ自らの心の奥底に宿る感情を最大限誠実に表現する為に必須であったのです。彼の音楽は彼の人生経験そのものであり、彼はそれを最大限真正に表現する事を追求したのです。

 

 

モンポウ:

 

最良の言葉とは発せられない言葉である。 ご存知のように私は無口な男で、音数少ない作曲家である。

 

音楽は表現不可能なものの為に作られる。音楽が自らの影から顔を出し再びその中に戻るようであって欲しい。私は(それを表現する為に)新たな方法を見つけなければならないと思う。このような正式すぎる世界において私の音楽を封じ込める事は出来ないと思う。

 

 

鐘の音:

Mompou a la fabric de campanes barcelona 1915.jpg鐘の音のような響きはモンポウの音楽の特筆すべき特徴の一つです。

モンポウの母方の家系「ダンコス」はフランス系で何世代にも渡る有名な鐘の製造工場を営んでいました。幼少時代に聞いたり熱心に観察した鐘の音はモンポウの音楽に多大な影響を与えました。モンポウの一音毎の音質に対する並外れた感受性と関心は形式・構造に基づく作曲法(単音ではなく多くの音/マスに関心をおく)と比較して特筆すべき特徴だと思います。あたかも鐘を一つずつ注意深く調整するかの様に、本当に上質な音のみ選択されて五線譜上に配置されていった様な感じがします。

 

 

 

Música Callada(沈黙の音楽) :

 

この音楽には空気も光もない。 それは弱い心臓の鼓動である。空間において数ミリメーターも届く事が期待されないが、その任務は私達の心の最深部と精神の最も秘密の領域に到達することである。この音楽は沈黙している。なぜならその聴覚は内面にあるからである。抑制と思慮。その感情は秘密で、我々の孤独の冷たく大きな穹窿(きゅうりゅう)の下にのみ響きとして形成される。私の沈黙の音楽、この生まれたばかりの子が、人生の新しい暖かさと人間の心の表現を我々にもたらしてくれる事を望む。常に同一で、常に新しい形で。

 

 

 

モンポウと「時代精神」:

 

確かに私が大学に入学した時 —正確にはアルベール・カミュがノーベル賞を受賞したとき—実存主義が文学の中だけでなくその当時の空気の中に漂っていた。私はそれらの概念が芽を出すための土壌だった(...)

クララ・ハネス,私的詩集 (1959–1979)

 

クララ・ハネス/Clara Janés (バルセローナ, 1940年11月6日—) はスペイン、カタルーニャの詩人・翻訳家で、いくつかあるモンポウの伝記の中でも最も完成度の高い「モンポウの沈黙の人生/ La vida callada de Federico Mompou'」の著者でもあります。クララの父親、ジョセップ・ハネス・イ・オリベカタルーニャの詩人で20世紀スペインの最も有名な出版社の創始者の一人です。ハネス家 (ジョセップと彼の妻エステル・ナダル・サウケット)とフレデリック・モンポウと彼の妻カルメ・ブラボー(ピアニストでもあった)は親友でハネス家で頻繁に催されていた夜会で音楽から文学・芸術一般と幅広い範囲で文化的な意見交換をしました。


 

この「フラダリーク・モンポウ その1」を終える前に、モンポウの音楽にぴったりな詩を一つご紹介したいと思います。ドイツの詩人、ライナー・マリア・リルケの「音楽へ(AN DIE MUSIK)」という作品です。

 

 

 

 

音楽へ (AN DIE MUSIK)

 

音楽: 彫像の呼吸。おそらく: 
絵画の沈黙。 お前は言語、そこでは全ての言語が
終わる。 お前は時間
死する心の方向へ垂直にそびえ立つ

 

感情、誰に向けて? おお、お前は私達の感情の

何への生まれ変わりなのか?—: 聴覚的風景。

お前、異人:音楽。お前、心—空間
我々の外側で増大した。我々の中にある最も奥深い空間、
我々を超越し、外へ出ようと強いる、—
神聖なる出発:
我々の内部の最も奥深い点が

外部に出るとき、到達可能な最遠の距離の様に、空気の

向こう側の様に:

純粋、

無限、

もう住むことができない

ギャラリー: 

Mompou_por_las_montañas_de_La_Garriga_hacia_1912.jpg frederic_mompou_1955.jpg mompoupianochassaigne-foto-colita-1978.jpg
参照: 

La vida callada de Federico Mompou (Spanish) by Clara Janés

Le Jardin Retrouve. The Music of Frederic Mompou by Wilfrid Mellers

続き:フラダリーク(フェデリコ)・モンポウ2:ギター作品(コンポステラ組曲他)

コメント

はじめまして。フェデリコモンポウの情報を探していたら偶然このページにたどり着きました。とても参考になりました。なんとギターのブログなんですね(;^_^A   ところでリルケという詩人の名前は知っていたのですが詩は初めてです。難しいのでなんとなくなんですが、なにかぐっとくるかんじがします。もう少しこの詩の意味を知りたいと思いました。記事の続き楽しみにしています(*´∇`*)

名もないピアニストさん、コメントありがとうございます!クラシックギターのブログですが音楽に関するなるべく幅広い話題を取り扱うことをモットーにしています。今後ともどうぞよろしく。リルケの詩は象徴が多く難解なので始めは取っ付きにくいのですが、奥が深いので読めば読む程素晴らしさが増して行きます。この詩はFrau Hanna Wolffと言う人の邸宅で行われたコンサートにてゲストブックにリルケが記したものだと伝えられていて、まさに音楽に対する讃歌のような作品です。

いつも勉強させて頂いてます。自分にはちょっと難しすぎるので美しい演奏を聞きながら何回も読み直しています。最近になって急におっしゃることが理解出来るようになってきたような気がして モンポウの音楽がさらに好きになりました。 ただ最後のリルケの詩だけは何回読み返してもサッパリ見当がつきません。もしよろしかったら何を意味していのかや モンポウとの関連性を記事にして頂けませんか。よろしくお願いします。

タナベさん貴重なご要望ありがとうございます。近日中に更新しますのでしばらくお待ちください。

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